ロジカルシンキング3

なぜ、相手に自分の「答え」が通じないのか

結論、根拠、方法。ビジネスパーソンであれば、表現は違っても日頃から耳にする言葉だろうし、答えの要素としてこの3つを用意するなど当たり前ではないかと思われるだろう。しかし、問題なのはあなたが考えている結論が相手にとっても同様に明快なものか、あなたの考えている根拠が相手を納得させるのに十分か、そして、あなたの考えている方法で本当に動くことができるのか、ということなのだ。あくまで相手にとって3つの要素が明快でなければ意味がない。人間誰しも自分が考えたことを完全に客観的に眺めることはできない。しかし、チェックポイントはいくつかある。このチェックポイントは、自分が伝えてだったときに自分の答えの要素をチェックするヒントになり、また、自分が受け手で、相手の話が理解できないときに、なぜわからないのか、どこがわからないのかを分析するヒントにもなる。

「結論」が伝わらないときの2つの落とし穴

落とし穴1 結論は「課題の答えの要約」であって、「自分の言いたいことの要約」ではない。

「当社は製造小売業という業態に、新規参入すべきかどうか」という命題に対する答えを見出すべくまとめたレポートがある。確かにチームの努力の跡がうかがえる詳細な分析データが並んでいる。しかし、書き手の検討や逡巡の軌跡を瞬間に見抜く神通力のある社長でない限り、この結論を見た社長の反応は次のようなものである。「で、要するにやるの、やらないの」「要するに、どっちなの?」という発言が相手から出てしまっては、残念ながらこのコミュニケーションは失敗と言わざるを得ない。読み手の立場に立つと、どうしてこんなことが、と思われるだろうが、実際に書き手になってみると、この手のことは容易に起こりえる。別に、課題を間違えて検討を始めたわけではない。しかし、検討の途中でいろいろな意見があり、気になることもたくさんあると、伝えたいことが次々でてくる。書き手はさまざまな情報を得て、思考を深め、検討を開始した時点よりそれだけ進化しているわけである。しかし、コミュニケーションの相手である社長はどうだろう。報告会に臨む社長は、自分なりの結論や、それなりの懸念事項を持っているにせよ、自分の出した課題にどんな答えが返ってくるのか聞きたいと思っているだろう。すなわち、SPA事業に参入すべきか否か、の答えを待っているのだ。これが結論だと思ったら、もう一度課題を確認してほしい。自分の結論が自分の言いたいことの要約になっていないか、本当に答えるべき課題に対する答えの核になっているのか、ということを。いかなるコミュニケーションにおいても、課題と答え、答えの核となる結論は整合していなければならない。

落とし穴2「状況に応じて」「場合によっては」に要注意。付帯条件は同床異夢の温床。

相手に結論が明確に伝わる、という点で留意すべきなのは、どうにでも解釈できるような曖昧さを排除する、ということだ。「状況に応じて臨機応変な対応」これは指示の曖昧さにつながる。状況によっては、場合に応じて、といった付帯条件を表す言葉が、あなたの口をついて出たときは要注意だ。その時はぜひ、自問自答してほしい。状況に応じてというが、どういう状況のときにどうするのか。場合によってはというのは具体的にはどういう場合にどうするのか。と。

そして、付帯条件をきちんと説明できるようにしてから、その説明の中身を相手に伝えてもらいたい。例えば、「状況によっては」ではなく「製品Aの売り上げが前年比105%を上回ったら。」と、また「地域によっては」ではなく「代理店カバレッジが40%以下の地域は」というように定量化するだけではなく、「顧客から、店頭での入金処理スピードについて要望が出た場合には・・・・の検討を始める」というように、定性的な中身を伝えることによっても、明確にすることができる。

もし、説明に詰まったら、それは残念ながら、問題がきちんと解けていない、ということだ。表現やコミュニケーションの問題ではない。付帯条件をなくすだけで、結論はぐっと明確になる。